40歳の頃、当時の妻と離婚で散々揉めていたとき、大好きだった母親をくも膜下出血で亡くした。そしてそのことで父親には勘当され実家に近づくことも禁止された。肉親も、お金も、信用も全てを失い、実家から遠いところで一人で暮らしていた。
母親がしんだのは2003年3月17日、12時7分。私が仕事を抜けられず病院に着いたのは12時8分。まだ母親の手は温かかった。「12時7分にご臨終になられました」看護師の機械的なその声だけが耳の奥でずっと繰り返された。
一人で暮らしながら生きる楽しみもなく贖罪の意識に苛まれていた自分。そして書き始めたのが「星の砂と月のピアス」。
主人公の勝木数海が恋人の武下凡子を病気で亡くす時、「初めて出会ったあの海の星の砂が欲しい」って言われて星の砂を集めに行く。そして病院に戻ろうとした数海が車に乗り込んだ時、車内の時計は朝の4時57分。その瞬間、彼の右目から無意識に流れた涙。
「凡子は生まれた日に天国に帰って行った。最後の言葉は『幸せだった』って。時間は4時57分」そう目に涙を溜めて数海に告げた凡子の母親。その瞬間、数海の手の中から滑り落ちた、星の砂が詰まった小瓶。
母親の死に目に会えなかった罪の意識から書いた小説だった。
そして何もかも失くした男女がアメリカの異国で出会い人生を終わらせる。それが「ベルビューの恋人」で今の動画「ラブレター」。
全ての始まりは母親を死なせた贖罪の意識から。
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